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1階と3階

短編

 そこはもともと3階建てで、もちろん1階と2階と3階があった。今は2階がなくなって、とても高い天井というか吹き抜けな1階と元のままの3階があるだけだった。大ざっぱな工事でただ2階の床や柱を取り払っただけのようだった。それは、もうそこが日常的に使用される場所ではなくなったからで、倉庫として使われるようになったからだった。

 今、そこにあるエレベーターは2階に止まるけれど降りることはできない、何もないところで停まる。何もないというかエレベーターのある周辺の床だけが残っていてあるところでいきなり途切れている、その床の断面は1階から見える。2階の壁についてた内線電話はそのまま残っていて、3階は線が切られているのに2階はそうではないから1階から電話をかけることができる。でもそれは当たり前だけど鳴るだけで、誰も取ることができない、音は1階中によく響く。そういったものが残っているせいか2階の床のあったらへんにはその床の気配みたいなものがあって、1階にいるとありもしない天井がまだあるような気がしてくる。3階の床の下は元の2階の天井だったけれどそのことはあまり気にかからない。1階も3階も、ほとんど人は来ないから前よりずっと静かになった。音はよく響くようになった。窓の外側にはシャッターがついているけれど1カ所鍵がかかっていないところがあって、それを見つけた女の子が積んである段ボールに座って歌を歌っているのを聞いた。電気がついていない中でその一つの窓からだけ光が入ってきていた。2階に電話をかけたくなった。